「体はちっちゃいくせに態度が大きくて、怒りんぼ・・・」。このようなことは、私たち獣医師が日常の診療をしていると、実際にありがちだな・・・。と感じていることです。小型犬症候群は科学的に定義されたものでありませんが、小型犬に見られるいわゆるペットとして望ましくない行動の総称として使われています。
小型犬症候群とは、一般的に次のような行動を指します。
人に飛びつく
人、他の犬、ベビーカーなどの物に突進したり吠えたりする
飼い主に従わない、または無視する
攻撃性(噛みつく、うなり声をあげる、かじるなど)
家具に飛び乗る
リードを付けて歩くことを嫌がる
大型犬であれば、これらの行動は許されることではなく、一緒に生活することが困難になります。そのため、小型犬でよく見られるという状況を考えると、飼い主さんの接し方がこのような行動を助長していることが大きな要因のひとつであるとも考えられています。
たとえば外を歩いていて、大型犬に出会ったとしましょう。小さな愛犬になにかあったらいけないと思って、抱き上げたい衝動に駆られるかもしれません。そうすると小型犬は飼い主さんの不安を察知し、大型犬に出会うことは心配なことなんだと学習します。同じ状況が起きるたびにそのような不安が強くなり、それが恐怖となり、攻撃性へと発展していきます。こうして、小型犬は何も起きないうちから姿が見えるだけで興奮したり、吠えたりするようになります。
また、「小さくてかわいい」こと自体も要因になります!もし大型犬が人間に飛びついたり突進したりしたら、たとえ犬が友好的だったとしても慣れない人にとっては恐怖や危険だと思われる可能性があります。そのため、大型犬では早くからこういったトレーニングをすることの重要性が広く認識されています。一方で、かわいくて小さい子犬が足首にかじりついた場合はどうでしょう?たいていは大きな問題だとは思われず、スルーされることが多いのではないでしょうか。つまり、大型犬だと通常許されないことも、小型犬だと簡単に見逃されたままになってしまうのです。これでは甘やかされて育った子ども同じで、何をやってもいいんだ、と学習してしまいます。
子犬は生後1年間、ワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成犬は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢犬や特別なケアが必要な犬は、より頻繁な検診が必要になる場合があります。
やはり子犬のうちからのトレーニングは非常に大切です。可能であれば、子犬と親犬の環境を確認できるようなところから子犬を迎い入れるようにし、親犬の性格や子犬の人間に対する反応を観察しましょう。子犬を迎えたら、子犬の社会化トレーニングについて動物病院に相談してみましょう。子犬があらゆるサイズの犬やさまざまな人間と安全に出会える環境を経験すること、そして、そういった交流は怖いことではない、という認識することは非常に重要です。小型犬であっても、愛犬はラブラドールのサイズだと想定して取り扱う意識を忘れないようにしましょう。見知らぬ人に飛びついたり、呼んでも戻ってこないのでは困ります。
人間と暮らしていくために必要なしつけ、そして適切な社会化トレーニングは、どんな犬にとっても家族の一員となるために必要不可欠なことです。初めから一貫したルールと制限がある方が、長い目で見て犬にとっても混乱することなく、不安を感じずにすみます。ただし、トレーニングは望ましくないことに対して罰を与えるのではなく、必ずポジティブな報酬、いわゆるごほうび(おやつでも遊びでも)がある前提で望ましい行動を奨励するような方法をとるようにします。
もし、愛犬がすでに小型犬症候群と思われるような兆候があるなら、早めに対処しましょう。成犬になってからでも全く直すことができない、ということではありませんが、長く放置してしまうとより直りにくく、さらにひどくなる可能性もあります。かかりつけの獣医師に相談し、状況に応じて行動学の専門医や信頼できるドッグトレーナーを紹介してもらってください。
小型犬には小型犬ならではのかわいらしさがありますが、家族の一員としていてもらうためのトレーニングは必須です。犬は飼い主さんをよく見ています。犬のトレーニングを通じて、愛犬とともに飼い主さん自身も成長を実感することができることでしょう。
監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)
この記事は私たちのスタッフライターの一人が執筆しました
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