尿石症とは、膀胱や尿道といった尿路に結石ができてしまう病気です。初期では無症状の場合もありますが、多くは頻尿や血尿等の膀胱炎の症状を引き起こし、排尿時に痛みを伴うこともあります。特にオスではメスよりも結石が尿路(とくに尿道)に詰まりまやすく、尿が出しづらい、あるいは出ないなどの症状が出ることもあり、この場合には早急な対処が必要になります。
尿中にはカルシウムやリンといった様々なミネラル成分が含まれています。本来であれば尿に溶け込んでいるこれらの成分が、何らかの理由により析出し結晶となって尿中に現れます。そして、結晶ができやすい状況が持続することによって結石に成長していきます。できる場所によって名称がつけられ、膀胱にできるものを膀胱結石、尿道に存在すれば尿道結石、腎臓に存在するものを腎臓結石と呼ばれます。また、結石は構成する成分に種類があります。犬でよく見られるのは、ストルバイトやシュウ酸カルシウムとよばれる結石です。そのほかにも尿酸アンモニウムやシスチン、シリカといった結石が見られることもありますし、いくつかの種類が混ざっている結石もあります。それぞれの成分によってその性質が異なり、それに伴い対応策が異なります。
原因といっても、それぞれの結石の種類によっても原因が異なり、様々な要因が関係していることが多くあります。ここではいくつかの一般的な内容をご紹介します。
年齢:一般的に、2歳から10歳くらいまでの間での発症が多いようですが、結石の種類によって発症しやすい年齢が異なります。ストルバイト尿石の場合は5歳未満の比較的若い年齢での発症が多く、シュウ酸カルシウム尿石は、5歳以降の中年齢以降の発症が多いとされています。
性別: 結石の種類によって、性別による発症頻度に違いがあります。一般的にオスの方が尿道が細いので、命にかかわる病態である結晶や結石による尿道閉塞を起こすリスクが高くなります。
細菌感染:犬のストルバイト尿石症は、その多くが尿路の細菌感染に起因するものと考えられています。細菌がもつ酵素により尿がアルカリ性に傾き、ストルバイトの結晶が析出しやすくなります。
食事: 犬の健康を維持するうえで食事は非常に重要です。体調や体質に合わない種類の食事を与えることで、病態が悪化してしまうこともあります。健康な犬にとっては問題のない栄養組成の食事であっても、元々尿石症になりやすい体質を持っている犬にとっては、特定の栄養成分が過剰あるいは不足してしまうといったこともあります。なお、結石の種類によっても、最適な栄養が異なることもあります。尿石症と診断された場合には、食事内容についても獣医師とよく相談するようにしましょう。
水分の摂取量が少ない:トータル的な水分摂取量が不十分だと、尿が濃縮され結石が形成される可能性が高まると考えられています。これは結石の種類に関わらず、尿石症として共通する重要な要因の一つです。
犬種による素因: ミニチュアシュナウザーやシー・ズー、ダルメシアン、ヨークシャーテリア、ブルドッグなどの特定の犬種では、膀胱結石ができやすい傾向があるとされています。
その他の要因として、排尿を我慢していしまう状況、尿が出きらずに溜まってしまう何らかの構造的、機能的異常がある、尿中の成分に影響を及ぼすような体質、あるいは疾患があるなどが挙げられます。
子犬は生後1年間、ワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成犬は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢犬や特別なケアが必要な犬は、より頻繁な検診が必要になる場合があります。
尿石症の症状は、いわゆる膀胱炎の症状が典型的です。症状だけでは、結石ができているのか、それとも一時的な炎症なのかを判断することはできませんが、小さな結石が排尿時に出てき来たり、おしっこシートにキラキラとした結晶が排泄されたりして気が付くこともあるかもしれません。以下のようなよくみられる徴候のうち、いずれかに気が付いたら、すぐにかかりつけの獣医師に連絡して、検査を受ける必要があります。
重要:犬の排尿が確認できない場合、尿路閉塞の可能性があります。こうした状態は命にかかわる危険があるため、ただちにかかりつけの獣医師に相談してください。
当然ながら、栄養は犬の心身の全体的な健康状態において重要な役割を果たしています。栄養バランスの取れた食事を与えることは、活動的で健康的なライフスタイルのために非常に重要です。犬が膀胱結石などの尿石症を患っている場合、その病態や体質に合わせた適切な食事を与えることが一層重要となります。一般的に、食事中のマグネシウムやリン、カルシウム、タンパク質などの成分が結石の形成に関連しているため、獣医師はこうした成分の含量を適切に調整した食事を与えることで、尿中の結石や結晶の構成成分を減少させ、これらができにくいような尿の組成を維持することを目指します。より正確な診断や治療法の選択肢については、必ずかかりつけの獣医師に相談し、犬の尿路の健康維持にとって最善のドッグフードを紹介してもらうようにしてください。
そして、過去に尿石症などの泌尿器系トラブルの治療を受けたことのある犬は、再発のリスクがあることを覚えておきましょう。定期的な健康診断を受けながら、適切な栄養管理を継続し、症状の再発していないか慎重に観察することが重要です。
この記事は私たちのスタッフライターの一人が執筆しました
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