体重の悩み、というとたいていは増える方かもしれませんが、犬でも人間でも心当たりがないのに痩せてくる、というのは心配です。とくに犬では被毛が長かったり厚みがあったりすることで、なかなか飼い主さんが気づかず、よくない状況が知らない間に進んでしまうこともあります。やはり健康は1日してならず、常日頃からのケアが大切です。毎月定期的に、愛犬の体重を測ることは、生涯を通じて実践すべき素晴らしい健康習慣です。
体重は、シンプルに入ってくるカロリーと出て行くカロリーの収支のため、犬の体重が減ってきているとしたら、この収支に何か支障が生じている、と考えるのが妥当です。状況としては、摂取カロリーが減少している、身体の消費カロリーが突然増加した、本来食事から得られる栄養を消化吸収できず、体が利用できていない、などが考えられます。そして、その根本的な原因は非常にさまざまです。犬の心当たりのない、あるいは予期しない突然の体重減少の一般的な原因をご紹介します。
食欲不振:犬の食欲不振には多くの原因があげられます。いわゆる肝臓病や腎臓病といった病的な原因があって気持ち悪い、あるいは吐き気がするというケースもあれば、家庭環境の大きな変化等によって受けるストレスや不安のせいで食事への関心が薄れてしまう、といったことも考えられます。
痛み:犬でもどこか痛いところがあればばうつ状態になったり、食事の場所まで移動するのがおっくうになったりすることがあります。食事量に影響しやすい例としては、口や歯、首の痛みがあります。
子犬は生後1年間、ワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成犬は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢犬や特別なケアが必要な犬は、より頻繁な検診が必要になる場合があります。
運動量の増加:あたりまえでは、と拍子抜けするかもしれませんが、散歩担当が替わって散歩時間が長くなった、最近相性の良い犬友達ができて、よく走り回っている、などよくよく考えてみたら・・・、ということが意外とあるかもしれません。運動量が増えれば消費カロリーももちろん増えるので、今までよりも食事量が必要になります。獣医師に食事量について相談してみましょう。
妊娠と授乳:母犬は実に多くのエネルギーを必要とします。犬が妊娠中または授乳中の場合、エネルギー収支を適正に保つため、妊娠・授乳期用(子犬用)フードを自由に食べられるようにします。
病的な原因:糖尿病やがんなど、病的な原因があると、普段どおり食べていてもエネルギーの消費が亢進してしまい体重が減ってしまいます。
消化器疾患など:消化器疾患の場合、多くが下痢の症状を伴います。下痢では、食べたものが腸管を早く通過してしまったり、腸内の水分量に異常が生じたりして、結果的に栄養素が正しく吸収されなくなります。また、ある種の消化酵素が欠乏した場合、脂肪などの食物中の特定の成分を消化することができず、栄養障害や体重減少につながることがあります。
寄生虫:消化管内に寄生虫がいる場合、寄生虫そのものによって消化管が傷つき、食べたものがうまく消化吸収できなくなったり、犬が摂取した栄養をいわゆる「横取り」されることもあります。
ダイエットをしているわけでもないのに、体重が減ってきた場合には、その原因を探って早急に適切な対処をしなければなりません。動物病院に行くのはもちろんですが、飼い主さんが犬の様子を正確に獣医師に伝えることは、診察や診断の際に非常に役立ちます。犬の元気や食欲の様子、水を飲む量、下痢、あるいは便の色や回数はどうなのか、妊娠の可能性、そのほか気になる様子があるか、何かきっかけとなるような家庭環境の変化がなかったかなど、さまざまな角度からよく観察してみましょう。
獣医師にとって、情報は多いほうがいいのです。それらの情報や犬の様子などの状況に応じて、血液検査や尿検査など、必要な検査を実施することになります。糞便検査のため、その日の便を可能であれば持参するとよいでしょう。
体重の定期的なチェックが、いかに大切かご理解いただけたでしょうか。健康管理は日々の積み重ねで、早期に発見し早期に対処するのが一番です。気になることがあれば、獣医師に相談してくださいね。
監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)
この記事は私たちのスタッフライターの一人が執筆しました
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