最近パッケージに、「グレインフリー」と表記されたドッグフードやキャットフードが多く販売されています。グレインフリーとは、グレイン=穀物を原材料に使用していないことを指しています。○○フリーと書いてあると何となく健康に良さそうなイメージがあるかもしれませんが、全てのペットがこのような食事を食べなければならないわけではありません。
グレインフリーのペットフードは、複数の穀類にアレルギーがある場合には、選択肢の1つとなります。食物アレルギーが疑われる場合には、動物病院でアレルゲンの確定診断をしてもらってから利用するといいでしょう。ただし、食物アレルギー用の療法食は、食物アレルゲンになりにくい限られた数のたんぱく質源と炭水化物源で作られていますが、一般の市販ペットフードではそこまで厳密でないことが多くあります。
「犬や猫は野生では穀物を食べないから避けたほうがいいのではないか」という声もしばしば聞かれます。たしかに彼らは、野生動物であった頃には穀類を食べることはなかったでしょう。というのは、穀類に含まれる炭水化物はそのままでは消化することが困難なのです。我々人間も米を生のまま食べることはできませんが、水を加え圧力をかけて加熱すること(アルファ化)で、食べることができるようになります。アルファ化された複数の麦類を犬に与えたところ、100%消化吸収されたという研究があります。犬は人間同様、穀類を生のまま与えても消化吸収することはできませんが、ペットフードはきちんと加熱調理され炭水化物もアルファ化されていますので、食べても問題なく体内で利用されるのです。猫も犬と同様にアルファ化された穀類由来のデンプンであれば消化吸収できることが分かっています。ただし、猫は完全な肉食動物であるため、雑食動物の犬と比べて炭水化物の利用が上手ではありません。そのため、食事中の炭水化物の含有量は40%以内を目安にすると良いでしょう。
子犬は生後1年間、ワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成犬は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢犬や特別なケアが必要な犬は、より頻繁な検診が必要になる場合があります。
穀物に対する食物アレルギーがあるなど、穀物をさけるべき理由がある場合、グレインフリーのペットフードは食事の選択肢として有効です。しかしながら、健康な犬猫がグレインフリーの食事を摂取することについては特にメリットはありません。また、炭水化物源としての穀物を減らすことで、相対的にタンパク質の含有量が増えてしまうと、高齢期の犬猫にとっては内臓に負担がかかることもありますので注意が必要です。
「グレインフリー」ではなく「グルテンフリー」と書かれたペットフードも販売されています。グルテンとは、麦類全般に含まれているタンパク質の一種です。グルテンフリーとは、本来このグルテンを含んでいないという意味なのですが、最近では麦類が入っていないという意味で用いられることもあるようです。
グルテンフリー食は、本来グルテンに対してアレルギーを示す人のセリアック病の患者の方向けの食事だったのですが、現在では、特に食物アレルギーがなくてもヘルシーなライフスタイルを望む人々の間に広まっています。ただし、健康な方が麦類もしくはグルテンを避けた食生活をおくったとしても、何か身体に良い影響があるかということに関して科学的な根拠があるわけではありません。 このセリアック病と同様のグルテン過敏症は、犬ではアイリッシュ・セターでしばしばみられます。グルテンフリーのドッグフードには麦類が含まれていないので、グルテン過敏症のアイリッシュ・セターのほか、麦類に食物アレルギーを示す犬にも利用できることがあります。
近年では、フードの機能性や味のバリエーションだけでなく、厳選された原材料で作られた食事を食べさせたいというこだわりに応えるものまで、さまざまな商品が販売されています。しかし大切なのは、健康状態やライフステージに合った、栄養バランスが適切なフードを与えることです。健康状態や食事に関して迷う場合には獣医師に相談し、適切なフードを選ぶようにしましょう。
この記事は私たちのスタッフライターの一人が執筆しました
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