尿石 (尿路結石) 症は、犬で膀胱や尿道などの下部尿路で問題となることの多い疾患です。尿に含まれるミネラル成分などが結晶化し、凝集と成長を繰り返すと結石になります。犬でもっともよくみられる尿石はストルバイトとシュウ酸カルシウムです。今回はこの2つの尿石症について解説します。
膀胱結石は文字どおり膀胱の中に尿石が存在していることを意味します。犬では次のような膀胱炎の症状を示すこともありますが、全く症状がないこともあります。
レントゲンおよび腹部超音波検査によって診断されます。尿路感染症の可能性を考慮し、尿の細菌培養検査を実施することもあります。膀胱結石以外の、ほかの原因による膀胱炎や腫瘍でも同じような症状が現れるため、獣医師の説明を聞きながら必要な検査を実施してもらいましょう。
ストルバイト尿石は、犬でもっとも多い膀胱結石の一つで、尿中のマグネシウムとリン酸が結合することによって形成される無機質の析出物です。尿中のストルバイト結晶自体は、比較的よく認められ、必ずしも病的な状態ではありません。犬では通常、アンモニアを生成する細菌の感染によって尿中pHが上昇し、ストルバイト結晶が凝集して結石になります。
Veterinary Information Network*¹ によると、ストルバイト尿石が確認された犬の85%はメスで、罹患時の平均年齢は2.9歳です。
シー・ズー、 ミニチュア・シュナウザー、 ヨークシャー・テリア、 ラブラドール・レトリーバーおよびダックスフンドなどの犬種では、ストルバイト尿石形成のリスクが高い傾向があります。犬では、ストルバイト尿石形成の多くに下部尿路感染症が関与しています。
米国獣医内科学会*² のガイドラインに従い、特別な事情がない限り、まず獣医師はストルバイト尿石を栄養学的な方法で溶解する内科的治療を推奨します。具体的にはストルバイトが溶解しやすいように設計された療法食の給与を提案します。ヒルズのプリスクリプション・ダイエットをはじめ、尿石症に対応している療法食について獣医師に相談してください。犬の場合、その多くが尿路感染症に起因しているため、適切な抗菌剤の投与も併せて実施されます。
また、膀胱砕石術という体内あるいは体外から尿石を分解する方法を推奨されるケースもあるかもしれません。
内科的な治療が難しい場合や、膀胱内を尿石がほぼ占拠するほど重度な場合には、外科手術が選択されます。治療については、獣医師とよく相談するようにしてください。

子犬は生後1年間、ワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成犬は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢犬や特別なケアが必要な犬は、より頻繁な検診が必要になる場合があります。
ストルバイト尿石とは異なり、内科的に溶解することができません。尿のpHに大きく影響されることはありませんが、酸性尿で析出しやすくなります。尿中にカルシウムやシュウ酸が過剰に排泄されることにより形成されますが、はっきり原因が解明されていないため、管理が難しい尿石です。
The Canadian Veterinary Journal*³ に掲載された研究によると、ストルバイトとは対照的に、シュウ酸カルシウムは犬ではメスよりもオスで多いようです。また同研究によると、シュウ酸カルシウム尿石が確認された犬の平均年齢は9.3歳で、他の種類の尿石よりも比較的高齢でできやすくなっています。多くの犬種で報告されていますが、キースホンド、ノーリッチ・テリア、ノーフォーク・テリア、ポメラニアンでリスクが高いとされています。近年、ミネソタ大学*⁴ によって、シュウ酸カルシウム尿石が発症しやすくなる遺伝子欠損が発見され、イングリッシュ・ブルドッグでは遺伝子検査が可能になりました。アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、ボーダー・コリー、ボストン・テリアブルマスティフ、ハバニーズ、ロットワイラー、スタッフォードシャー・ブル・テリアでもこの変異が見つかっています。
シュウ酸カルシウム尿石の形成には、とくに下部尿路感染症は関与しておらず、無菌尿でも発生します。
ストルバイト尿石とは異なり、食事で溶解することはできません。外科手術や膀胱砕石術、排尿性尿路水圧推進法などによって除去します。複数の種類の成分でできている膀胱結石が発生する犬もいるため、今後の適切な管理のために、尿石は分析に提出するとよいでしょう。
胱や尿道から尿石を除去したら、それで終わりではありません。尿石ができてしまった以上、何も対策をしなければまたできてしまう可能性があります。再発予防のためには水分摂取と栄養管理が重要な役割を果たします。
尿が希釈されれば結晶成分が凝集しにくくなるため、飲水量を増やすこと、さらにミネラル成分などが調節された食事を給与することが非常に重要になります。フードに水を足す、ウェットフードを与える、鶏肉などでだしをとったスープを食事に足す、噴水式の給水器を利用するといった工夫をすることで、飲水を促すことができます。
尿石の形成リスクを低減するように特別に設計された療法食は、ミネラル成分やタンパク質が適切に調節されています。例えば、ヒルズのプリスクリプション・ダイエットは、犬の尿中における結晶や結石の構成成分を減少させるように各種の成分が調節され、シュウ酸カルシウムやストルバイトの結晶形成リスクを軽減しながら、必要な栄養素がバランスよく配合され、さらに尿路の健康維持に役立つ栄養素が含まれています。
水分摂取と栄養管理に加えて、再発予防にさらに重要なことは、定期検診によるモニタリングです。治療後、定期的に尿検査やレントゲンなどの画像検査を実施することによって、治療効果の確認ができ、何らかの変化があっても大事に至る前に対処することができます。結果として再発リスクを軽減し、再発までの期間を延長することができるのです。愛犬に最適なケアやモニタリング方法について、獣医師と相談しましょう。
ミネソタ大学尿石センターでは、犬や猫の尿石を分析するサービスを行っており、ホームページで尿石についての様々な学術情報を掲載しています。興味のある方は是非読んでみてください。また愛犬の治療に関して不安や疑問があるときには、遠慮せず獣医師に相談するようにしましょう。
*参照先:
*1 https://veterinarypartner.vin.com/default.aspx?pid=19239&catId=102899&id=4951352
*2 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5032870/
*3 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6237259/
*4 https://vetmed.umn.edu/research/research-labs/canine-genetics-lab/canine-genetics-testing/hereditary-calcium-oxalate
サラ・ウーテン博士は、2002年にカリフォルニア大学デービス校獣医学部を卒業しました。アメリカ獣医ジャーナリスト協会の会員であるウーテン博士は、コロラド州グリーリーでの小動物診療、関連分野、リーダーシップ、クライアントとのコミュニケーションに関する講演、執筆活動に携わっています。家族とのキャンプ、スキー、スキューバダイビング、トライアスロンへの参加を楽しんでいます。
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