体に含まれる液体成分(水分)を体液といい、体が正常に機能するために必要な環境を作っているほか、さまざまな電解質を含んでいます。Key獣医師* は、この体液のバランスが正常に保たれるための原理と重要性を紹介しています。犬は体重の60~70%が水分です。

脱水症状は、体内の水分が過剰に失われてしまうことで起こります。脱水が起こると、体内の電解質のバランスが崩れ、血液が濃縮し、体を正常に機能させることができなくなります。このように、決して甘く見てはいけない状態です。犬が脱水症状を起こしているかどうかを確認するサインや、脱水を起こさないようにするための対策を学びましょう。

脱水症状のサイン

屋外で噴水の水を飲むボーダーコリー犬は脱水が起きているかどうか、明らかな症状がないかぎりわかりづらいものです。見分け方のひとつとして皮膚の弾力性を確認する皮膚つまみ試験があります。これは犬の首筋の皮膚をやさしく持ち上げてから放してみて、皮膚がすぐに元に戻るかどうかで判断する方法です。すぐに元に戻れば問題ありませんが、戻るのに時間がかかったり皮膚が持ち上がったままの状態の場合、脱水症状を起こしている可能性があります。

ただし、この皮膚つまみテストは、高齢の犬や皮膚の弾力性に影響するホルモンにトラブルがある場合には、脱水していなくても戻りにくい場合もあるので、判断に注意が必要です。なお、軽度の脱水であれば、歯茎や口の乾き具合を観察することでわかることもあります。一般的に皮膚つまみテストで皮膚が元に戻らないような場合には、相当脱水症状が進行していて深刻な状況だと考えられます。

脱水時には以下のような臨床徴候が見られることもあります。

  • 心拍数の増加、呼吸が荒い
  • 元気がなくぼんやりした状態
  • 起き上がったり歩いたりするときにふらつく
  • 歯茎が暗赤色または青白い
  • 目がくぼんでいるように見える、目に力がない

愛犬に脱水症状を疑うような様子があれば、すぐに動物病院を受診してください。状態を確認してもらい、速やかに獣医師の治療を受ける必要があります。

脱水症状の治療

自分で水が飲めるようであれば、応急処置としてはまずは水を飲ませます。欲しがっても少しずつ与えるようにしましょう。飲まない場合には、口の周りを濡らしたり、スポイトなどを使って与えます。軽症のように見えても自分で判断せず、動物病院で診察を受けてください。

脱水の一般的な治療は、皮下(皮膚の下)または静脈内への輸液治療です。脱水の程度によって、必要な輸液量が決まります。そのほか、個々の状況に応じて必要な治療がなされます。

水筒を持った人間に水を吹きかけられるゴールデンレトリバー何かしらの基礎疾患によって脱水が起きている場合には、その原因を治療する必要があります。犬の脱水の原因となる症状、あるいは疾患には、嘔吐 下痢をおこす疾患や、肝疾患腎疾患、熱中症、食事や飲水が不十分、糖尿病などのホルモン性疾患などがあります。そのほかにも脱水症状を引き起こす可能性のある病態は多くあります。

状況により基礎疾患の確認のため、血液検査や尿検査、あるいはレントゲン検査や腹部超音波検査など必要な検査が実施されます。検査結果に応じて、治療計画が立てられるでしょう。

繰り返しになりますが、犬の脱水症状はわかりにくいことが多く、まあ大丈夫だろう、と思っていても症状が進行して内臓にダメージを与え深刻な状況になってしまうこともあります。おかしいな、と思ったら様子を見ることはせずに、できるだけ早く獣医師の診察を受けてください。

脱水症状の対策

基本は、水分が不足しないように常に水が飲めるような環境を整えることです。健康であれば必要な水分量を自分で摂取するはずですが、水の容器のタイプやサイズ、素材、置いてある場所などによって飲水量が変わることがあります。高齢などの場合、水飲み場所が遠かったりするとそこまで行くのが億劫になり、結果的に水分不足になることがあります。このようなときは、水飲み場所を工夫することのほか、ウェットフードを与えることも水分摂取に大いに役立ちます。さらに犬はパンティングによって対応調節を行うため、特に夏場に犬が快適に過ごすためには、水分補給は非常に重要です。熱中症によっても脱水症状が起きるため要注意です。犬を連れて出かけるときは、犬用の飲料水を必ず持参して、定期的に飲ませるようにしましょう。

必要な水分摂取量を確認する

犬は1日当たり、体重1ポンド(約450g)につき約1オンス(約28g)の水分を摂取する必要があります。仮に犬の体重が10ポンド(約4.5kg)であれば、毎日約10オンス(約283g)の水を摂取する必要があります。ただし、糖尿病や腎臓病など特定の状況下では、犬がたくさん水を飲んでいても脱水症状になっていることがあります。犬がいつも以上に水を飲んでいるようであれば、まずはどのくらい1日で水を飲んでいるのか確認し、獣医師に相談してください。

脱水の怖さ、そして水分補給の重要性をお分かりいただけたでしょうか。日頃から水分摂取量には注意して積極的に水分補給させること、そして少しでも異変を感じたらすぐに動物病院を受診してくださいね。

*参照先:https://veteriankey.com/applied-physiology-of-body-fluids-in-dogs-and-cats/

Dr. Sarah Wooten Dr. Sarah Wooten

サラ・ウーテン博士は、2002年にカリフォルニア大学デービス校獣医学部を卒業しました。アメリカ獣医ジャーナリスト協会の会員であるウーテン博士は、コロラド州グリーリーでの小動物診療、関連分野、リーダーシップ、クライアントとのコミュニケーションに関する講演、執筆活動に携わっています。家族とのキャンプ、スキー、スキューバダイビング、​​トライアスロンへの参加を楽しんでいます。