猫のためのホームデンタルケア

スタッフ著者

人間と共に暮らす猫たちの90%近くが、一生のうちに歯のトラブルを経験するといわれています。ということは、少なくとも今飼われている猫の一般的な食生活では、歯垢や歯石の蓄積、歯周病への進行、さらに歯槽膿漏から歯の喪失といったトラブルが起きやすいと考えるのが妥当でしょう。そう考えると、日頃から定期的にデンタルケアを行うことの大切さが理解できるのではないでしょうか。

デンタルケアの基本は歯みがきです。猫のために工夫された歯みがきグッズが多く市販されています。そんな中、ヒルズでは猫の歯の健康維持に役立つキャットフードヒルズサイエンス・ダイエットベット・エッセンシャルマルチケア＋デンタルを用意しています。独自の科学的根拠に基づいたデンタルキブルテクノロジーを採用し、大きな粒に単方向の食物繊維を含み、噛むことで歯垢の沈着を抑えることに役立ちます。もちろん猫の総合的な栄養ニーズも満たしている高品質なキャットフードです。

一方で、もうすでに歯のトラブルがあり痛みがあっても、飼い主さんが気づいていないケースも多くあります。猫は、敵に弱点を知られないように、痛みを本能的に隠す性質があるためです。いつもより隠れたがる、攻撃的になるなどのサインがある場合、何らかの痛みを抱えている可能性があります。

歯垢とは

歯垢とは歯の表面に付着した軟らかい沈着物で、口の中の細菌とその副産物でできています。歯垢に唾液中のミネラル成分が沈着すると、数日で歯石が形成されます。歯の根元に近い部分に歯石が付くと、その周囲は炎症を起こしやすくなり歯肉炎に至ります。歯肉炎が進行すると歯周炎となり、いわゆる歯周病となるのです。猫の70%前後が2歳になる頃までに歯周病にかかっているといわれ、さらに歯垢に含まれる細菌が血流にのり、心臓や腎臓、肝臓などの臓器に影響を及ぼすリスクもあります。

子猫は生後1年以内にワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成猫は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢猫や特別なケアが必要な猫はより頻繁な検診が必要になる場合があります。

歯のトラブルのサイン

猫に歯のトラブルが起きている場合に、見られることの多いサインを紹介します。

口臭：口臭が気になる場合、口の中以外の原因もありますが、歯のトラブルの可能性が一番高いです。
歯茎に沿って出血または赤黒い線がある
歯茎の炎症：歯茎の腫れは歯肉疾患へ進行する可能性があり、歯の喪失や食事が食べられないなどの猫の生活の質の低下につながります。そのほかに腎臓病や猫免疫不全ウイルスなどが関与している可能性もあります。
歯茎の潰瘍
よだれが目立っていないか、口の周りを気にする行為がないか
フードをうまく噛めない・食べたがらない

これらの様子に気づいたら、すぐに動物病院を受診してください。獣医師からは全身麻酔下での歯科処置を提案される場合があります。その際には、事前に血液検査を行って健康状態をチェックしたうえで、全身麻酔が可能かどうかが判断されます。歯科処置には以下の内容が含まれます。

しっかりと口腔検査およびX線検査を実施することにより、歯肉溝の下にトラブルがないかチェックする
歯周病の予防のため、歯肉溝の下(歯周ポケットの内部）を徹底的にクリーニングする
歯冠上(歯の見えている部分）の歯垢や歯石蓄積の除去を行う
歯の研磨を行い、歯石を付着しにくくする

ホームデンタルケア

ホームデンタルケアの王道は、なんといっても歯磨きです。歯磨きをマスターするためのアイデアや注意点などをご紹介します。

歯磨きに慣れさせる。口の周りを触ることから徐々に初めて、唇を引き上げて歯が触れるようになったら、指か綿棒で歯茎をやさしくマッサージする。1回の時間を短くして、嫌な印象を残さないようにする。
猫の歯みがきのために工夫された歯ブラシ（磨きやすい形状になっている、指サック型のものなど）を使用する。
猫用の歯磨きペーストやジェルなどを使用する。人間用の歯磨き粉には、猫にとって有害な成分が含まれている場合がある。
すでに歯のトラブルがある場合には、歯磨きの方法について獣医師に確認しておく。炎症部分に触れることは痛みを伴い、歯みがき嫌いになりかねない。

歯みがきに対する印象をよくするために、ごほうびをうまく利用するようにしてください。慣れるまでは、歯みがきの最中でもタイミングを選んで与えるようにすると受け入れてくれやすいかもしれません。