きれい好きで知られる猫は、起きている時間の多くを毛づくろいに費やしています。とはいっても、見るたびにひっきりなしに舐めたり掻いたりしている・・・、となるとそれは皮膚に何らかの刺激やかゆみがあるのかもしれません。猫がしきりに引っ掻いたり、過度に毛づくろいをするときには、いくつか考えられる理由があります。この記事では、その中でも多く見られるケースと、その対処方法について解説します。
寄生虫:猫の寄生虫の中でも、猫のかゆみや過剰な毛づくろいの原因として非常に多いのはノミによるものです。ノミは成虫だけではなく卵が人間の衣服に付いて家の中に持ち込まれることがあるため、ほとんどの時間、または完全に室内で過ごす猫であっても、ノミが寄生する可能性があります。首の後ろから尾の付け根にかけての背中の中心部に脱毛やブツブツとしたかさぶたの病変ができることが多く、この領域に病変がある場合に、ノミによる可能性が高いと判断されます。実際のところ、目にしているノミの成虫はごく一部で、猫にノミを見つけたら、少なくともその100倍のノミが家の中にいることになるといわれています!ノミに対してアレルギーがある場合には、より強い痒みと広範囲に病変が確認されます。
ノミのほかにも、猫に強い痒みを起こす原因としてダニなどが知られています。
猫のアトピー性皮膚炎(猫アトピー性皮膚症候群):花粉や草、イエダニなど環境中の物質に対してのアレルギー反応と考えられる皮膚疾患です。花粉や植物が原因の場合、一年のうち特定の時期に猫の症状が悪化することで気がつくこともあります。
食物アレルギー:何らかの食物に対しての過敏反応である食物アレルギーも、皮膚へ刺激やかゆみを引き起こすことがあります。猫の食物アレルギーの原因になることが多いものとして、牛肉や鶏肉、魚や乳製品が知られています。
子猫は生後1年以内にワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成猫は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢猫や特別なケアが必要な猫はより頻繁な検診が必要になる場合があります。
皮膚感染症:猫の細菌や真菌による皮膚感染症については、発生自体もあまり多くはなく、さらにその多くが別の原因から二次的に生じたものです。たとえば、猫が掻きむしったり毛づくろいをし過ぎて皮膚が傷ついた際に、口の中や皮膚表面の細菌が皮膚に入り込んで感染を引き起こすことがあります。このようにかゆみを放置しておくと、さらに病態が悪化してしまう悪循環に陥ってしまうのです。
ストレス:上記のような明確な原因ではなく、何らかの精神的なストレスによって毛づくろいが過剰となり、脱毛を主とした病変を形成することがあります。必要な検査を実施し、上記のような疾患の可能性を除外した上で診断されます。
まず、予防できることはあらかじめやっておかなければなりません。ノミをはじめとした寄生虫の防除は忘れずに行いましょう。獣医師に相談して適切な駆除薬を処方してもらってください。
そして、過度に舐めたり引っ掻いたりしていることに気づいたら、後回しにせず早めに獣医師に相談してください。獣医師は、個々の状況に応じて必要な検査を行うとともに、食物アレルギーの判断のため除去食試験を勧める可能性があります。これは低アレルギー食などを利用して症状の改善が見られるかを確認する方法で、8週間程度継続する必要があります。さまざまな可能性が否定され、ストレスが過度の毛づくろいの原因だと診断されたら、獣医師や動物病院のスタッフは、猫の家庭内におけるストレスを軽減し、起こり得る猫同士の争いを低減または回避する方法について、アドバイスをしてくれることでしょう。
皮膚のトラブルは病状が進むほど複雑化して診断が難しくなりがちです。早い段階で適切な診断手順に沿うことで、解決へのゴールに近づくことになります。
監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)
この記事は私たちのスタッフライターの一人が執筆しました
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