大腸性の下痢はゼリー状の粘液が混じった軟便や下痢便になることが多く、ときに血液が混じることもあります。排便回数が増え、何度もトイレに行きいきむのにあまり出ない、いわゆるしぶりという様子がみられることもあります。さらにやっかいなのは、膀胱炎や尿道閉塞でもこのしぶりと同じような様子が見られることもあることです。もし一時的な下痢であれば少し様子をみることもできますが、尿道閉塞だった場合は緊急事態です。そのため、このしぶりのような様子がみられたら、まずは動物病院を受診してください。
猫が屋外で排泄する習慣がある場合、当然ながら排尿や排便などの排泄に関する異常に気づきにくくなります。そのため、普段から常にペットの様子に気を配り、ちょっとした変化に気づけるようにしておきましょう。元気や食欲が落ちてきたり、体重が減ってきたりしたことで、実は下痢が続いていたことが判明することもあり得るのです。
子猫は生後1年以内にワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成猫は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢猫や特別なケアが必要な猫はより頻繁な検診が必要になる場合があります。
急性か慢性かの判断の後、原因に合わせた治療が行われます。急性例では、たとえばおやつの盗み食いが原因の場合には、思い当たるおやつは与えないようにして、食事も少なめにするなどしてお腹を休めましょう。こういった一時的なケースの場合の多くは数日以内に快方に向かうでしょう。一方で、下痢が48時間以上続くときや痛みを感じているように見えるときは、積極的な治療と合わせて原因の調査も必要になります。糞便検査はまず最初に実施されるので、来院時に持参するとよいでしょう。
治療法には以下のようなものがあります。
大腸炎の症例の多くは食事を変更することによって改善が見られるケースが多いので、獣医師は消化しやすく胃腸への負担が少ないように設計されているフードを推奨します。それらのフードの中には、腸内環境の健康維持に重要な役割を果たすプレバイオティクスが含まれているものもあります。こういったフードを一定期間与え、改善が見られたら元のフードに戻すケースもあれば、与えることで調子が良ければずっと使い続けることもできます。
状況に応じて抗炎症薬が必要になるケースもあります。ステロイドは非常に優れた抗炎症薬で、投薬する期間は病状や病態によって異なります。
食物アレルギーや食物不耐症が疑われる場合には、獣医師は除去食試験を推奨します。これは、疑われる特定の食材を含まない、あるいはアレルギーを起こす可能性の低い食事を一定期間与えることで、症状が消失するかどうかを確認するというものです。一般的に除去食試験には、今までその猫が食べたことのない原材料のみがタンパク質源となっている新奇たんぱく食や、アレルギーの原因となりにくい加水分解たんぱく質を使用した食事が用いられます。除去食試験は異なるタイプのフードを使用して複数回のチャレンジが必要な場合もあるため、最初がダメだったからといって、食事の変更は意味がないとはいえないのです。
状況に応じて抗菌剤が投与される場合もあります。
寄生虫が疑われる場合には、駆虫薬による治療が行われます。あわせて生活環境の確認と今後の予防法について、獣医師と相談する必要があります。
猫は同居猫との相性や環境の変化などがストレスになることがあり、それによって体調を崩してしまうことがあります。現在の猫の状況をよく観察し、まずはどのように環境を整えたらよいか獣医師と相談しましょう。プラグイン式フェロモンディフューザーなどを使用する方法や、ストレスのケアに役立つ成分が含まれるフードやサプリメントを紹介されることもあるでしょう。不安や恐怖の程度が強い場合には、医薬品が推奨されるケースもあります。
腸内の腫瘍やポリープ、異物摂取が確認された場合には外科的処置が必要になることがあります。
お腹の調子も含めて、飼っているペットの体調がいつもと違う場合、とても心配になるものです。もちろん何かあれば動物病院に受診していただくのはもちろんなのですが、日頃から様子をよく観察し、その気になる症状はいつからなのか、その前後に思い当たるようなことはなかったか、元気や食欲はあるか、普段の食事の内容などを把握しておいてください。飼い主さんからの情報は、より迅速で適切な医療を提供するのにとても役立つのです。
監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)
この記事は私たちのスタッフライターの一人が執筆しました
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