私たち人間にとって身近な食材のパン。バターやチーズなどと一緒に食べていると、猫が寄ってきた・・・なんていうお家もあるかもしれませんね。では、パンは猫に与えてもよいのでしょうか。猫にパンを与える前に、パンについて、そして猫の食性について考えていきましょう。
フランスパンや食パンなど、何か混ぜこんであったり特別な味付けがしていないシンプルなものであれば少しあげる程度なら問題ありません。ただし、日常的に与えるといったことはせずに、ごくたまにあげるくらいにしておきましょう。
栄養学的な面から言うと、シンプルなパンには、猫にとって有害となるような成分は含まれてはいないものの、別の言い方をすれば猫に必要な栄養成分が特別含まれているわけでもありません。要は、エンプティカロリー源(カロリーは高いのにもかかわらず、栄養は空っぽという意味)と言えます。参考までに、米国で一般的な食パン1切れのカロリーは、5kg程度の猫の1日に必要なカロリーの1/4~1/5を占めます。2切れとなると、人間の食欲を満たすにはギリギリといったところですが、猫にとっては完全にカロリー過多となります。
パンが猫にとって役立つシチュエーションとして考えられるのは、投薬のときかもしれません。好みもあるので一概には言えませんが、小さく丸めて錠剤を隠すことができます。ペンシルベニア大学ライアン動物病院*¹ によると、薬を入れた食品は苦い味がするため、多くの猫は嫌がります。パンというよりもウェットフードの方が比較的うまくいきやすいかもしれませんが、猫がパンのほうを好むのなら、それも1つの方法だと紹介しています。
すでに、「シンプルなパンであればあげすぎないようすれば問題ない」ことは解説しましたが、では注意が必要なパン、とはどういったものでしょうか。
世界小動物獣医師会*² によると、人間には安全でも動物には有害な食物があり、パンも例外ではないそうです。パンにトマトや玉ねぎ、ニンニク、あるいはレーズンやチョコレートなどが含まれている場合、それは猫にとって有害だと考えましょう。ハーブやスパイスも、猫にとって一般的には有害になるため、安全という確証がない限り避けましょう。パンに限らず、人間の食品を愛猫に与える前に獣医師に相談してください。
そして、なんと同じパンでもしっかりと焼き上げたパンではなく、焼く前のパン生地の状態のものは猫に要注意なのです。
多くのパン生地やピザ生地には、これらの味の要となるイースト菌が含まれています。イースト菌が発酵することによって独特の風味やふっくらとした食感を生みだします。イースト菌は高温で死滅するため、焼き上げたパンであればその影響を心配する必要はありません。『予防獣医学*³』で記載されているように、パン生地などに含まれているイースト菌は、少量でもすぐに猫に中毒を起こすのに十分な量のアルコールと二酸化炭素を生成し、猫に深刻な問題をもたらします。また、パンを膨らませるのと同じ作用が猫の胃でも起こることがあり、状況によっては外科手術が必要になることもあるのです。
メルク獣医学マニュアル*⁴ でも、動物のパン生地中毒について紹介しています。胃の環境でイースト菌が増殖し発酵が進むと、エタノールなどの発酵産物の生成が促進されます。それが吸収され血流に入ると、酩酊や代謝性アシドーシスなどを引き起こします。アルコールはすべての動物にとって絶対に禁忌です。それは人間と違って動物はアルコールを分解することができないためで、摂取が直ちに生命の危機につながります。
パン生地の摂取による中毒の初期症状には、嘔吐やえづき、腹部の膨満などがあげられます。思い当たることや心配な症状があるようであれば、すぐに動物病院を受診してください。
子猫は生後1年以内にワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成猫は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢猫や特別なケアが必要な猫はより頻繁な検診が必要になる場合があります。
猫は完全な肉食動物で、多くのタンパク質、特に動物性タンパク質を必要とします。つまり必ず肉や魚などを食べる必要があるということです。動物性由来のタンパク質を基本に必要なアミノ酸や脂質、ビタミン・ミネラル類、エネルギーを適切なバランスで含まれるように、最適な原材料で作られたキャットフードを与えましょう。
一方、パンの栄養組成の多くは炭水化物が占めています。つまり、猫の食性を考えると、パンを消化するのはあまり得意ではないのです。ですから、健康でもあえて与えることが推奨される食品ではないですし、ましてや糖尿病を患っている場合には注意が必要です。コーネル大学獣医学部*⁵ では、猫が糖尿病の場合、一般的にはインシュリン療法および食事療法が基本となることが多く、血糖値のコントロールのために低炭水化物で、できればウェットフードを与えるように推奨しています。
一般的に、犬や猫では食べ慣れない食品を与えると、健康であってもお腹の調子が悪くなることはよくあります。ですから基本は犬あるいは猫用ペットフードであることを忘れずに、おやつも犬や猫用に調整されたものを量を守って与える方が安心です。人間とペットたちとは生理的な代謝機能が違っているところも多い、ということを理解しましょう。
*参照先:
*1 https://www.vet.upenn.edu/docs/default-source/ryan/ryan-behavior-medicine/medicating-your-cat-%28pdf%29.pdf?sfvrsn=cd5e17ba_2
*2 https://www.vin.com/apputil/content/defaultadv1.aspx?id=7054886&pid=12886
*3 https://www.preventivevet.com/cats/human-foods-you-should-not-give-to-your-cat
*4 https://www.merckvetmanual.com/toxicology/food-hazards/bread-dough-toxicosis-in-animals?autoredirectid=14432
*5 https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/cornell-feline-health-center/health-information/feline-health-topics/feline-diabetes
クリスティン・オブライエンはライターであり、母親であり、長年猫を飼っています。彼女の2匹のロシアンブルーは家を牛耳っています。Care.com、What to Expect、Fit Pregnancyにも記事を掲載しており、ペット、妊娠、家族生活について執筆しています。InstagramとTwitter(@brovelliobrien)で彼女をフォローしてください。
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